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BAYA

lounge chair

stainless steel, leather

2025

Baya は、動物の「巣」から着想を得て制作されたラウンジチェアである。
「なぜ人は創造せずにはいられないのか」という根源的な問いを出発点に、動物たちの「つくる」行為にその答えの一端を見出そうとし、「巣」に関するリサーチを行った。生きものたちが環境に応じて本能的に作り上げる巣は、機能と形態が不可分に結びついた、極めて純粋な構造体である。それは人間社会における文化的背景や装飾性とは異なり、創造の起源を照らし出す豊かな示唆に満ちている。
私は、「巣」というテーマを通じて、人間と動物のあいだに横たわる創造性の本質を、人間が自己を振り返るための鏡として見つめ直そうとした。

本作では、CNCベンディングによって成形された有機的なステンレスパイプのフレームを木に見立て、そこに細長い革を巻き付け、手作業で編み込むことで、自身の「ねぐら」としての巣を構築している。精密な工業的プロセスと、動物的な本能に通じる身体的な手仕事を交差させることで、人間の制作行為の境界を再構成することを目指した。

人類の歴史の中でも最も古くから用いられてきた革は、生活に欠かせない素材のひとつである。耐久性と柔軟性に優れ、家具や衣服、道具、楽器、儀式具など、さまざまな用途に活用されてきた。時代や地域を超えて、革は単なる実用素材を超え、自然と人間との深い関係性を象徴する存在として特別な地位を築いてきた。
Baya では、そうした革の素朴で堅牢な魅力を、ステンレスという強靭な構造体と組み合わせることで、素材の物語性と構造的な機能性の両立を図っている。CNCによる有機的な曲線が金属の冷たさをやわらげ、手仕事と機械加工の融合を体現している。

包み込むようなフォルムはさまざまな姿勢での座り方に対応し、現代の忙しない生活の中にひとときの安らぎをもたらす。また、革の部分は交換可能であるため、構造体を保ちながら長期にわたって使用することができる。この再構築可能な特性は、ものとの関係を一時的な消費ではなく、時間とともに育まれる愛着へと変えていく。
大量生産と短命な消費が支配する現代において、Baya は「真のサステナビリティとは何か」を静かに、しかし力強く問いかけている。

これは、私自身のための、あるいは誰かのための「居場所=巣」をつくるという行為を通じて、人間が持つ生物的な記憶と、道具を介した制作行為とのあいだにある、曖昧で親密な関係性を可視化する哲学的な試みでもある。

 

制作:高本夏実, DEC Cintrage Sàrl (stainless frame)
撮影:Doyoung Kim

 

Acknowledgements: Camille Blin, Erwan Bouroullec
MA Diploma Project — ECAL