
stool
paper cord, urushi (Japanese lacquer)
2025
1本の長いペーパーコードと漆(Japanese lacquer)のみを用いて制作されたこのスツールは、プロセスそのものを通してスツールという家具の新たな可能性を探求した試みの成果である。
伝統工芸の分野で広く用いられてきた漆は、古くから天然の接着剤として、またその仕上がりの美しさから装飾的な目的でも重宝されてきた。数十層、ときには百層以上もの漆を塗り重ねては研磨することで、素材の耐久性と美観を同時に高めることができる。中でも、異なる色の漆を重ねてから表面を削り出す「研ぎ出し」の技法は、独特の模様を生み出す特徴的な表現手法である。
この作品では、漆の接着性と装飾的な塗膜形成という両面の特性を活かし、原型に巻き付けたペーパーコードの上から幾重にも漆を塗り重ね、丁寧に研磨を施した。たった一層のペーパーコードが、幾層にも重ねられた漆によって固定されることで、構造としての強度と視覚的な表情を両立させている。
制作:高本夏実
撮影:Visvaldas Morkevicius